特に変化が大きいのが、情報を「探す」場面です。これまでは検索結果に
並んだウェブサイトを自分で開いて情報を探すのが一般的でしたが、最近
ではAIが情報をまとめ、質問に対する答えを文章で示すようになっています。
NTTドコモ モバイル社会研究所が生成AI利用者を対象に行った調査では、AIに
よる要約だけで満足し、リンクを開かずに検索を終えることが「ほとんど」
「よく」「ときどき」あると答えた人が、合わせて64%に上りました。
こうした仕組みを支えているのが、自然言語・テキスト解析です。人が書いた
文章や質問について、意味や文脈、意図などをAIで読み取り、必要な情報を探
したり、分類したり、要約や翻訳をしたり、新たな文章を作ったりするための
技術です。近年では、大規模言語モデルの普及によって、その利用範囲が大きく
広がっています。
今回、弊社では、この人工知能×自然言語・テキスト解析分野についての動向
を探るべく、米国特許についての特許分析レポートを作成いたしました。
弊社で作成した検索式によると、36,149件ありました。
全体の件数推移を見ると、2010年代後半から出願件数が大きく増加し、直近で
は年間に5,000件以上の出願があるなど、高い水準にあります(統計レポート
P9)。プレイヤーごとに出願件数を見ると、IBM(INTERNATIONAL BUSINESS
MACHINES)が2,714件で最多であり、マイクロソフトが1,975件、アルファベッ
ト(Google)が1,577件で続いています(統計レポートP5)。
一方、外国出願を伴う重要出願で見ると、アルファベットが968件で最多となり、
マイクロソフトが964件、百度が660件、サムスン電子が615件、IBMが416件と続
いており、単純な出願件数とは順位が変わります(統計レポートP12)。
技術内容の変化を見ると、2000年代には音声認識や検索、辞書・構文解析など、
個別の言語処理技術を組み合わせるものが中心でした。2010年代後半にはニュ
ーラルネットワークや、文章の意味を数値として扱うベクトル表現などを利用
する技術が増え、2021年以降は、大規模言語モデルによる文章生成や要約、画
像なども組み合わせた処理へと広がっています(AIレポートP5)。
用途についても変化が見られます。2000年代には音声認識、情報検索、文書分
類、翻訳、文字起こしなどが中心でしたが、その後、医療情報の解析や推薦
などへ広がり、2021年以降は、会議記録・要約、文書要約、ソフトウェアコード
生成、コンテンツ生成、法務・契約文書解析などが目立つようになっています
(AIレポートP7)。
さらに、AIレポートで主要各社の状況を具体的に見ると、自然言語を単に解析
したり文章を生成したりするだけでなく、検索や企業内のデータ、各種ソフト
ウェアと組み合わせて利用する方向が見えてきます。
たとえばIBMでは、質問応答や文書検索、テキスト分類などに関する特許が多く
見られます。プレスリリースでも、自然言語で企業のIT投資について質問・
分析できる「Conversational Insights」や、司法文書をAIで整理する技術、
非構造化文書から情報を抽出する技術などが発表されています。
マイクロソフトでは、言語モデルによる応答生成、検索、音声認識、意味解析、
テキスト分類などが幅広く見られ、電子メールやメッセージの作成、会議内容
の文字起こし・要約、ソフトウェア開発などへの利用が進められています。
また、最近の発表では、企業データやクラウドの運用情報をAIエージェントが
扱い、自然言語による問い合わせから情報取得や処理につなげる方向も示され
ています。
アルファベットでは、最新のGeminiモデルに加えて、高速なテキスト生成を
行う「DiffusionGemma」などが発表されています。アマゾンでは、利用者が
文章で示した条件を読み取り、商品や企業データなどから必要な情報を探し
て推薦する用途への展開がみられます。アドビでは、PDFの内容を理解して
作成や共有を支援するAIエージェントや、Creative Cloudの複数のアプリを
横断して作業するクリエイティブエージェントなど、自然言語から実際の作業
につなげる機能を拡大しています。
主要各社の用途を比較すると、5社とも「検索」が上位にあり、「翻訳」や、
コーディングを含む「ソフトウェア開発」も複数社で多く見られます。一方
で、IBMではソーシャルメディア、医療記録、規制対応、採用、マイクロソフト
ではゲームや顧客対応、アルファベットでは翻訳や会計、アマゾンでは会計や
顧客対応、アドビでは検索や翻訳など、それぞれの事業に応じた違いも見られ
ます(AIレポートP26)。
このように、自然言語・テキスト解析は、文章を分類したり検索したりする
技術から、文章を生成・要約する技術へ、さらに現在では、人の意図を読み取
って必要な情報を探し、判断や実際の作業につなげる技術へと広がっています。
一方で、利用範囲が広がるほど、AIがもっともらしい誤った回答をするハルシ
ネーションや、情報の信頼性、プライバシーなどへの対応も重要になります。
特許情報でも、2021年以降は、処理効率に加えて、セキュリティ、プライバシ
ー、説明のしやすさ、ハルシネーションの低減などが主要な技術課題として
見られるようになっています。
今後は、文章を自然に生成できることだけでなく、大量の文書や企業内データ
から必要な情報を正確に探し、文脈や根拠を保ったまま抽出・要約する技術が、
より重要になると考えられます。また、AIエージェントの普及により、自然
言語・テキスト解析は、すでに文章の生成や要約にとどまらず、利用者の指示
を理解して、情報検索やデータ分析、ソフトウェアの操作などにつなげるため
にも使われています。今後は、こうした処理をより正確に行うため、利用者の
意図や文脈を正しく捉える技術の重要性がさらに高まると考えられます。
以上、ご参考になれば幸いです。
(参考)
NTTドコモ モバイル社会研究所
「6割超がAI要約で検索完結」
https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20260205.html
他に、弊社AIレポートに記載のニュースやプレスリリースも参照しています。